「聖　書」

あなたの神、主はあなたの中から、あなたの同胞の中から、わたしのような預言者を立てられる。あなたたちは彼に聞き従わねばならない。このことはすべて、あなたがホレブで、集会の日に、「二度とわたしの神、主の声を聞き、この大いなる火を見て、死ぬことのないようにしてください」とあなたの神、主に求めたことによっている。主はそのときわたしに言われた。「彼らのことはもっともである。わたしは彼らのために、同胞の中からあなたのような預言者を立ててその口にわたしの言葉を授ける。彼はわたしが命じることをすべて彼らに告げるであろう。彼がわたしの名によってわたしの言葉を語るのに、聞き従わない者があるならば、わたしはその責任を追及する。ただし、その預言者がわたしの命じていないことを、勝手にわたしの名によって語り、あるいは、他の神々の名によって語るならば、その預言者は死なねばならない。」

（申命記　18章15～20節）

説　教　「わたしの言葉を授ける」

「わたしの言葉を授ける」何と重い言葉でしょうか。「重い」とは荷重の事ではありません。「栄光（ドグサ）：重さ」のことです。「わたしの言葉」は勿論「神の言葉」のことです。ここ二週に亘り「預言者」の御言葉に聴いてまいりました。御言葉に聴き従うことの「最善」を学んできたと言って良いでしょう。その意味を知ることの最善の御言葉が本日与えられました御言葉です。本日の御言葉は「メシア預言」と言われています。新約聖書の中にも本日の御言葉が多く登場します。「モーセが書いたのはわたし（イエス）のことだからです。」（ﾖﾊﾈ5：46）「まさにこの人こそ、世に来られる預言者である。」（ﾖﾊﾈ6:14）「はじめに言があった。」（ﾖﾊﾈ1:1）「あなたはあの預言者ですか。」（ﾖﾊﾈ1:21）他にもペテロやステファノたちが使徒言行録で本日の御言葉を用いて主イエスを証ししています。「モーセのような預言者」を常に今もイスラエルの人々は「メシア」として待ち望んでいるのです。新約の時代も又、同じでした。しかし本日の御言葉をよく読んでください。本当にメシア預言でしょうか。申命記はモーセの最後期に記された「律法の再授与」であり、長大な説教の形の「モーセの遺言」です。その巻末にモーセの死が記されて終ります。この意味は「後継者ヨシュア」へのバトン渡しであり、新しい世代への「いのちの継承」のことでしょう。本日の御言葉はメシアの事だけを語るものなのでしょうか。確かに「わたしの言葉を授かる預言者」は「単数」で記されています。しかし後節に色々な預言者や偽預言者を彷彿させる記事があることを鑑みると、複数の預言者の登場も考えられているのではないでしょうか。しかし本日の御言葉の重みを考えると、確かに聖書を読む人々が「モーセのような預言者」を「メシア」として待ち望む心持ちは分かります。主イエスは洗礼者ヨハネを「預言者以上の者」と呼び、「最後の預言者」（ﾙｶ16:16）と言われました。ここに記される「預言者」は夢や幻だけで語る者ではなく、「モーセのような預言者」です。神と「口から口へ」直接に語り合うことができる者です。これは主イエスを他にしていないでしょう。本日の御言葉の意味は「ヨシュア（イエス）への継承」と神の民を導く「神の言葉」のインマヌエルの約束でしょう。多くの預言者が神の民を導きました。今は、「真の預言者」である主イエスが「神の言葉」として、キリスト者に神の言葉を授けます。神の国建設の愛を実現していく為です。